(クレタ島では伝統音楽が根強い人気の模様)
2005年11月6日(水) 晴れ
帰国(Hania to Nice)
出発の日。寝過ごしては困るという緊張のせいか、夜中に何度か目覚める。
6時半過ぎに目が覚めそろそろ起きてパンを買いに行こうかとベッドの中で考えていると、
隣の部屋のギリシャ人ファミリーが階段を上って部屋に入る音が聞こえた。
昨日も寝ている時間に帰ってくる音がしたことを思い出す。不思議なファミリー。。。
7時になったところでベッドから出て、フェイスケアと顔面体操をしてから外へ出た。
ところが、昨晩同様、お店はどこも閉まっていて、残念ながら市場も開いていなかった。
少し遠くまで行ってみたのだが、ファーストフードのEVERESTにさえパン・オ・ショコラがなく、
がっかりしながら手ぶらで宿に戻った。
部屋に入ると、栗もあやぴーも既に起きていた。朝食の準備。スファキアで買ったクッキーを食べようと
いうことになったのだが、あやぴーが好きじゃないというので、もう一度私がパンを探しに行くことにした。
あやぴーは車酔いしやすいので、バスに乗る直前に何かを食べさせるより、いまのうちに何か食べさせておいた方が
得策だと思ったのだ。
先ほどは通り過ぎただけだったコーヒースタンドに行き、チョコレートのクロワッサン(パン・オ・ショコラの
こと)があるかどうか聞いてみた。すると、お兄さんが普通のクロワッサンならあると言った。
「じゃあ、それで。」とお願いすると、お兄さんはクロワッサンを二つに割ってからオーブンに入れて温め、
その上にヌテラ(ヘーゼルナッツ入りチョコペースト)を塗って、チョコクロワッサン・サンドにしてくれた。
びっくり!(笑)
クローリ(輪っか型のパン)があるのが見えたので値段を聞いてみると、お兄さんはクローリに触り、
「売り物にはできない」というようなことを言いながら首を横に振った。あやぴー用のパンが買えただけで十分。
お金を払ってから、宿に走り戻った。栗とあやぴーがベランダから声援を送ってくれた。
早速ヌテラ入りのクロワッサンをあやぴーに渡して朝食。ところが、大変なことになってしまった。
あやぴーがクロワッサンを口に入れると、あちこちからヌテラがはみ出してしまうのだ。
メチャクチャ食べにくそうで、かなり苦戦している。あやぴーは口の周りはもちろんのこと、
両手にもヌテラがべったり。栗に「なんでこんな食べにくいもの買ってくるんだよ!」と批判されたのだが、
お兄さんが好意で作ってくれたんだから仕方がない。大きなクロワッサンだったこともあり、
あやぴーは半分食べたところでギブアップ。残りは責任を取って私が食べることになった。
(栗は「ビャ-ク!まずそう!」と言って断固拒否だったのだ。苦笑)
念のために酔い止め薬を飲んでから宿を発つ。朝8時半のまだ静かな街の中を荷物を背負いながらバスターミナルまで
ゆっくり歩いていった。空港行きのバスが9時で良いことを確認した後、切符を3枚購入した。1人1,2ユーロ。
窓口のおばさんが「31番のバスよ。」と英語で教えてくれたので、私が「トリアンダ エナ」とギリシャ語で
繰り返すと、「ブラボー!」と笑顔で誉めてくれた。うれしかった。栗も共感してくれて、
「頑張ってギリシャ語を話した時に笑顔が返って来るとうれしいよね。」と二人で話した。
努力が報われる気がする。
さて、ハニアのバスターミナルは、フランスや日本のように行き先によってバス乗り場が決まっていない。
バスは空いている場所に適当に停められていて、時間になると、どこからともなく出発ホール前に集まってくる。
出発前にアナウンスが入るもののギリシャ語のみだし、乗客を乗せるとすぐに出発してしまう傾向にあるので
(=待ってくれない雰囲気)、心配性の栗が31番のバスを探しに出かけた。
私とあやぴーは待合室でレストランごっこ。私が注文したものをあやぴーがノートに書き、注文が終わると
あやぴーが食事を持ってきてくれる。そして私がそれを食べる。食事が終わるとあやぴーがノートに書いたお勘定を
運んでくる。私が支払いをする。そしてまた最初から繰り返し。あやぴーは平仮名と片仮名を使って注文の品を
メモしていた。日本語の書き方を忘れていないようでうれしかった。
栗が「31番のバスがないよ!」と言いながら戻ってきた。心配して窓口のおばさんに尋ねてみたのだが、
「大丈夫よ。」の一言のみ。9時5分前になってもバスは現れず、9時になっても何のアナウンスもない。
私達は少しずつ焦り始めてきた。「9時20分まで待ってバスが来なかったらタクシーに乗ろう」と決め、
荷物を出発ロビーから外に移動させた。
9時を10分過ぎたところで、栗がもう一度バスターミナルの敷地を一周し、31番のバスが来ていないか見に行った。
今度は成功!「今ちょうど着いたところなんだって。乗っていいって言うから、早く行こう。」と呼びに来てくれた。
荷物を背負ってバスに向かう。大きなバックパックをバスの荷物置き場に預けてから、中に乗り込んだ。栗が3枚分の
チケットを運転手のおじさんに見せると、おじさんは無言で頷いた。私達が座ると、バスはすぐさま出発した。
乗客は私たちだけだった。
10分もすると、周りにのどかな田舎の風景が広がり始め、20分程度で空港に到着した。あっという間だった。
荷物を取り出し、運転手さんに御礼を言ってから、空港内へ歩き出した。AEGEAN AIRLINESのカウンターで
チェックイン。意外と乗客が多い。大きなバックパックを預けると、搭乗は10時からだと言われた。
しばらく1階のロビーで椅子に座って待つ。アナウンスが入ったところで2階に行き、荷物検査を受けた。
ベルトをしているとアラームが鳴るので、あらかじめ外しておいたおかげか、3人とも一発OKだった。
その後、ロビーで搭乗券の最終チェック。係員のお姉さんが一人一人の搭乗券を見て、ゲートを通った人の名前を
黒いマーカーで消すという手作業。搭乗口から飛行機まではわずか10メートルほどだったのだが、セキュリティの
ためかバスが用意されていた。
飛行機に着くと、前と後ろと二ヵ所扉が開いていて、好きな方から乗るというシステムだった。私達は空いている
後ろの方から乗ったのだが、ちょうど席が後ろの方だったのでスムーズに座れた。ウェルカムキャンディのサービスが
あった後に離陸。次はドリンクサービス。その後しばらくするとお手ふきが配られ、シートベルト着用のサインが点灯した。
飛行機が下降体制に入った模様。雲の中を走ると機体が揺れた。そこを通り過ぎると、海や島が見え始めた。目が良い栗は
私達が昨年乗ったような高速船も見えると言った。そのうち建物がびっしりと埋まった平野が現れ、アテネに着いたことを
知った。わずか35分という短いフライトだった。
飛行機から出て荷物を受け取る。一番に出てきたので驚いた。すぐさま出発ゲートに向かい、フライト情報をチェック。
私達が予約しているのは午後4時50分のフライト。あと5時間待たなければならない。ところが、電光掲示板を見ていたら、
午後1時35分というフライトがあることに気がついた。現在11時半。ダメもとでフライトを変更してもらえないか
頼んでみようということになり、ルフトハンザ航空のカウンターに向かった。幸いにも空席があったようで、
快く変更を引き受けてもらうことができた。感激!(涙)
最初の予定では帰りはミュンヘン経由だったのだが、新しいフライトだとフランクフルト経由になるという。
それでもニースへ2時間も早く着くことができるので即決。あやぴーはカウンターのお姉さんにチョコレートを
もらって大喜びだった。
変更してもらったチケットを手に、チェックインカウンターへ向かう。思いのほか時間がかかり、大丈夫かなぁと
心配になったが、なんとか無事終了。預けた荷物は直接ニースまで向かうとのことでホッとした。身軽になったので、
すぐにゲートをくぐることにした。栗はプレイモービル(中世の騎士)をあやぴーに買い与え、早速一緒に遊び始めた。
私はブラブラとウインドーショッピングをして過ごした。
午後1時5分に搭乗の予定が20分遅れでスタートした。機内に入り、自分達の席に着くと、ドップリと疲れを感じた。
旅の郷愁も何もなく、早く家に帰りたいと思うばかりであった。あやぴーと私はすぐに眠ってしまった。
ドリンクサービスと機内食が同時にやってきたので、目を覚ました。大きな飛行機なのにエコノミーは乗務員が二人しか
おらず、食前酒、食事中の飲みもの、食後のコーヒーや紅茶を同時に配るので、かなり時間がかかっていた。
私達は後ろの方の席だったこともあり、余計に長く感じられた。そういえば、昨年のアテネードイツのフライトでも
こんな感じだったなぁと思い出す。食事が済むとまた眠気に襲われた。
飛行機は20分遅れで出発したのにもかかわらず、定刻通り午後3時40分にフランクフルトに到着した。乗り換えのために
長い通路を歩く。途中、あやぴーを連れてトイレに行った。あやぴーが使用済みのトイレットペーパーをゴミ箱に
捨てようとするのでびっくり。「ここはドイツだから、トイレットペーパーは便器に流していいんだよ。」と言うと、
あやぴーは怪訝な顔をした。ギリシャでの癖がすっかり身についているのだ。
子供の順応性は素晴らしいと思わず笑ってしまった。
(クレタ島滞在中、家に置いてきた金魚が気になっていたのか、金魚をテーマにした絵を描くことが多かったあやぴーです。)
次のフライトまで、窓際のテーブル席に座って待つことにした。あやぴーはお絵かき、私は日記を書く。
栗がコーヒーを買ってきてくれた。久しぶりのエスプレッソ。あやぴーはオレンジジュース。ギリシャとは違って
フレッシュではないのがちょっと寂しく感じる。
いよいよ最後のフライト、ニース行きである。午後4時45分の搭乗予定だったが、やはり20分ほど遅れた。
飛行機の入口で、スチュワーデスのドイツ人のお姉さんからぬいぐるみをもらったあやぴーが、「エフハリスト」と
ギリシャ語で御礼を言ったため、お姉さんは焦ってしまった。「もうこのぬいぐるみは持っているってことかしら。」と
心配そうに言うので、「いえいえ、娘はギリシャ語で「ありがとう。」と言ったんです。私達ギリシャでバカンスを
過ごしてきたから。」と説明すると、お姉さんは納得して安心したようだった。あやぴーは離陸前の定番「緊急時の
デモンストレーション」が大好きである。今回も一生懸命見入っていた。多分、機内にいる誰よりも真剣なまなざしだった
のではないかと思う。
窓の外では、日が暮れて、オレンジ色の空が段々と濃紺になってきた。滑走路のライトがきれい。
ずっと元気いっぱいだったあやぴーも、本日3つ目のフライトだからか、さすがにぐったりしていて、
すぐに寝てしまった。午後5時半離陸。フライトは1時間50分が予定されている。
飛行機の高度が上がり、シートベルト着用サインが消えるや否や、あやぴーがパッチリと目を覚ました。
早速、机を出してお絵かき。「見てみて!」と言うので外を見ると、暗くなった街中の上に水平線があり、
空がオレンジ、黄色、青という三色を呈していた。とてもきれいだった。
私の日記に影響を受けたらしいあやぴーから、漢字の勉強をしたいというリクエストがあった。
それならばと、数字の一から十を一緒に書き、その後、簡単そうな漢字にトライしてみた。月、山、木、川、水、
目、口、鼻、耳、手、足、車、火、上、下、、、あやぴーの名前の漢字もちょっと難しいけど教えてあげた。
勉強というより遊びの一巻。楽しんで学んでくれればこんなにうれしいことはない。ノートを全て使い終えた。
あやぴーが「飛行機が下がってる!」と言い始めると、シートベルト着用のサインが点灯し、アナウンスが入った。
テーブルを出しっぱなしにしていた栗に、「パパ、テーブルはもうしまわなくちゃいけないんだよ!」とあやぴーが
注意した。三人のテーブルが元の位置に戻ったことを確認し、満足そうに頷いている。「やったー!もうすぐニースだ!」と
ワクワクしている。「家に帰ったらプレイモービルで遊んでもいい?」と栗におねだりして、栗がいいよと答えると、
「うれしい~~~!」と大はしゃぎ。やっぱり家が一番だよね。
午後6時40分、長かった私達の空の旅がようやく終了した。
エピローグ
クレタ島は素晴らしい場所だった。私達は、テレビのドキュメンタリーで見たご老人のように、毎日たくさん歩いた。
寒い日も海でも泳いだ。クレタ島で鍛えていたからこそ、ニースに戻ってきてからも海で泳ぎつづけることができ、
クリスマス前に開かれた寒中水泳大会に参加することができたのだと思う。
クレタ島の自然は野性味にあふれ、その大らかさと素朴さは、人々のシンプルで飾りのない暮らしは、そして豊かな食材と
物価の安さは、「本当の豊かさとは何だろう」と考えるきっかけを与えてくれた。歩くことで体を動かしていると、
心が澄み渡っていくような気がした。青い海を見ていると、何とも言えぬ平和な気持ちが自分の中に広がった。
古代ギリシャの時代から言われているように、心と体はつながっているのだ。歩くという行為はとても単純だけど、
その単純作業を積み重ねていくことにより、無常の喜びが得られる。クレタ島には、頑張って歩いた人にしか見ることの
できない美しい景色がたくさんあって、それらは私の中にこれからも色褪せることなく残りつづけるだろうと思った。
昨年はサントリーニ島で3時間のハイキングをした。当時5才だった娘も私たちと一緒に10キロを歩いた。
そして、今年はクレタ島(サマリア渓谷)で16キロほど歩いた。来年はどのくらい歩けるようになっているだろうか。。。
終
最初のページに行く
クレタ島へのおすすめ書籍
●地球の歩き方「ギリシアとエーゲ海の島々&キプロス」
●るるぶ ギリシア・アテネ・エーゲ海―(アテネ/ミコノス島/サントリーニ島/クレタ島/ロドス島)
●旅の指さし会話帳〈24〉ギリシア(ギリシア語)
●Michelin Green Guide "Greece"(英語)
●Guide du routard "Crète"(仏語)