美食記

美食記


Parcours Live Restaurant
(パークール)

Jean-Marc Delacourt
(ジャン-マーク ドゥラクール)

1, Place Marcel Eusebi
06950 Falicon Village
tel.04.93.84.94.57
fax.04.93.98.66.90

http://www.parcoursliverestaurant.com
定休日は日曜日の夜と月曜日終日、火曜日の昼。
定期的なお休みもあるようですので、WEBサイトで事前にご確認下さい。

ニースから10キロほど北にあるFalicon(ファリコン)。
村に近づくと、茶色いお店の看板が出ているので、それに従って車を走らせると、
パーキングにぶつかるので、そこに車を停めます。レストランは村の中。
Mairie(市役所というか村役場)の隣です。
(公共交通機関はバス。ニースの長距離バスターミナルから25番のAire St-Michel行き。
日曜日にはバスがありませんが、平日は大体1時間に2便ほどあるようです。)

エズにある有名なホテル・レストラン「Chevre dŽOr(シェーヴル・ドール)」のシェフを務めていた
ジャン-マーク ドゥラクール氏が独立してオープンさせたレストラン。
早くもミシュランの一つ星に輝いています。ジャン-マーク ドゥラクール氏は、
フランスの優れた職人に与えられるMeilleur Ouvrier de Franceの称号を持っています。

料理は二つのコースのみですが、アレルギーの人や苦手なものがある人は、
その旨を伝えるとアレンジしてくれます。地元の産物、旬のものを使ったメニューは週変りだそうで、
特別な時だけでなく、季節ごとに通いたくなるお店です。

テラスを改装したと思われる室内は窓ガラス張りになっていて、景色が抜群。
海まで見張らせるんですよ。全席禁煙。タバコを吸いたい人は席を外し、
専用のサロンに行くという趣旨にも好感が持てます。

2004年12月4日


今年の誕生日には、このお店に連れて行ってもらおうとずっと決めていた。
シェーヴル・ドールのシェフが独立して開いたこの店はとても良いという評判だったし、
実際に食事をしてきた友達から話を聞いたら、ますます行きたくなった。
あいにく、私の誕生日の週末はお店がお休み中で、翌週末に予約の電話を入れたら満席。
ようやく三度目の正直で今日行けることになった。

ニースからそれほど遠くないというのに、Falicon(ファリコン)に行くのは数年ぶり。
パーキングに車を停め、村の中心を目指して歩く。時計台の方に行くと、市役所があり、レストランはその横だった。
中に入ると、モダンなインテリア。予約をしていることを栗が告げ、コートを預ける。

席に案内されて驚いた。友達から聞いていたが、ものすごく見晴らしがいい!紅葉が始まった木々はきれいだし、
遠くには海も見える。他の客が、「あそこにあるお城は、、、」とウエイターさんに聞いていたので、
その方向を見ると、うちの方ではないか!よく目をこらしてみたら、我が家の辺りも見ることができて、
なんだかうれしくなってしまった。

食前酒はパスして、ガス入りのミネラルウォーターを頼む。BRUというベルギーのお水が出てきた。珍しい。
あやぴーにはりんごジュース。

渡されたメニューを見ると、二つのコースがあるだけだった。栗が料理が多い方のコースにするというので、
私もそうすることにした。二つ目の料理に甲殻類が入っていたので、栗が変更をお願いすると(アレルギーのため)、
快く承諾してくれた。あやぴーはお魚が食べたいというので、スズキのグリル。ただ、ピスタチオのバター添えと
言うのは止めてもらい、味付けは塩とこしょうだけにしてもらった。子供はみんなそうだと思うけど、あやぴーも
例にもれず、食に対して意外と保守的なのだ。デザートのアイスは桃とキャラメルのどちらがいいかと聞かれ、
あやぴーは桃と即答した。

料理の注文が終わると、若いお兄さんがワインの注文を受けにやってきた。ハーフボトルがないと言われて
困っていると、グラスワインのサービスがあることを教えてくれた。料理ごとにワインが出てくるらしい。
私達にとっては魅力的なお誘いだったので、そうしてもらうことにした。

アミューズ・ブッシュ。あやぴーと私には、ガラスのコーヒーカップに入ったキノコのポタージュが出てきた。
オリーブオイルがけのクルトン乗せ。一口飲んだら、メチャクチャうまい!キノコの味が強すぎず、弱すぎず
ちょうど良いバランス。栗のアミューズはフォアグラと千切り野菜のサラダ。一口フォアグラをもらったが、
こちらも脂っこくなくて、でも存在感のあるお味はなかなか。フォアグラが苦手な栗もおいしいと言って
食べていた。目ざといあやぴーも一口もらい、気に入ったのかお代わりまでしていた。

前菜は帆立貝。ガラスの容器の一番下に帆立貝のお刺身と細かく切った野菜が敷かれていて、その上に
アボガドのピューレ、一番上にグレープフルーツのムースがのっかっている。そこに、羽のような形をしたオリーブ入りの
薄焼きビスケットが差し込まれていた。帆立貝の白、アボガドの緑、グレープフルーツの薄いピンクが美しい一品。
一番上のグレープフルーツのムースだけを食べてみると、それほどの感動はなかったのだが、しっかりスプーンを
容器の底まで突き刺し、三種類の具を少しずつ乗せて口の中に入れると、何気なかったようなグレープフルーツの甘さが
引き立ち、そして他の食材の味をも引き立たせ、ものすごいおいしく感じるのだった。こういう組み合わせを考えられるって
すごい!あやぴーに一口食べるか聞いてみると、「グレープフルーツのムースなんか食べたくない!」と却下された。
食に保守的だと損だねぇ。あげなくて済んでよかったけど!(笑)


ソムリエのお兄さん、白いぱりっとしたナプキンでボトルのラベルを隠しながらグラスに白ワインをつぎ、
「お魚が終わるまでに、このワインが何だか当ててくださいね。」と言い残していった。ええっ、宿題ですか?!(驚)
フルーティでちょっぴり甘いワイン。飲んだことがある気がするんだけど、どこのものだろう。
栗と私は一生懸命考えた。

あやぴーのお魚がやってきた。ナイフを入れると、身が柔らかい。
一口大に切ってあげると、あやぴーはおそるおそる口の中へ一切れ入れた。そして、大丈夫な味だと確認すると、
普通に食べ始めた。ただ、付け合せのさつまいものピューレは食べようとしない。一口もらったら、ニンニクの味が
利いていてメチャクチャおいしいではないか!「これ、すごいおいしいよ。にんじんみたいだよ。」と言ってみたのだが、
「好きじゃない。食べたくない。」と頑なに拒否された。お魚だけはしっかり平らげたので、まぁいいか。
好きなようにさせることにした。

ソムリエのお兄さんが宿題の答えあわせにやってきた。「ボルドーの白でしょうか?」と聞いてみると、
「ブブー!」と不正解であることを知らされた。「これはボルドーではありません。ラングドック・ルシヨン地方の
小さなワイン農家のものなんですよ。」と正解を教えてもらった。セパージュなど更なる説明をしてくれたのだが、
名前を覚えるのが苦手な私は細部まで記憶にとどめることができなかった。(お兄さん、ごめんなさい。。。)

帆立貝を食べ終わると、次の料理が運ばれてきた。千切りの野菜とパリパリパスタに甲殻類のソースがかかっていて、
その上にポーチドエッグが乗っている。甲殻類が食べられない栗はきのこのソース。
(だから、一人違うアミューズだったのね~!とここで気が付いた。)
パリパリパスタがかた焼きそばのようでおいしい。あやぴーに一口食べるか聞いてみると、思い切り首を横に振っていたが、
しばらくすると、「やっぱりたまごちょうだい!」とすりよってきた。私達はいつも自然飼育の鶏の卵を食べているので
卵には結構うるさいが、ここの卵も当然ながらかなりおいしい。甲殻類のソースが味に深みを出していて、だけど
あっさりしていて、とても良い料理だった。


あやぴーはお絵かきをしたり、塗り絵をしたり、更には席で寝っころがったり(ソファー席だったので)、
テーブルの下に隠れたりと、一人忙しくしていたが、他にも子連れの人がいたし、結婚式だという大家族もいた
おかげで、全く目立たないで済んだ。良かった。。。

友達から聞いていたのだが、レストランにはテレビがいくつかあって、画面からは常にキッチンの様子が流れている。
お料理をしているところが見れるなんておもしろい!スタッフはカメラを気にせず、もくもくと作業をしている。
いつ見ても、誰もがきびきびと動いている。大変な仕事だなぁと思い、私達も心して料理を味わなくちゃと思った。

大きなグラスに赤ワインを注いでくれたのはお姉さん。お姉さんは宿題は出さず、自ら一生懸命ワインの説明をしてくれた。
赤ワインもフランス南西部のもので、やはり小さなワイン農家のものということだった。
(それ以上の説明もあったが覚えられず。汗)

もうおなかいっぱいで何も食べれないと思っていたのに、お肉料理が出てきたら、反射的にカトラリーを持ち上げてしまう
悲しい食いしん坊の性(涙)。シナモン風味の仔牛のローストに、付け合せはサルシフィというごぼうのような根菜と、
あやぴーが拒否したさつまいものピューレ。仔牛のローストというのは、あまり味がないような印象を受けることも
あるのだが、出されたものは、皮がパリッとしていて、お肉は柔らかく、シナモン風味がかすかに利いているのがグー。
飽きずに食べることができた。サルシフィのローストもよく合っていたし、さつまいものピューレはやはり絶品だった。
さつまいもだけじゃなく、かぼちゃも入っているのではと思えるような甘さなのだが、にんにくが味を引き締めて
くれている。もし、「お肉がもうないので、メインはこのピューレだけです。その代わりお皿いっぱい盛りました。」と
言われたとしても、きっと怒らなかったと思う。(もちろん、そんなことは起らないのだが。)


食事の途中ではあったが、あやぴーがトイレに行きたいと言うので連れて行った。席に戻ってきて、テレビの画面を見ると、
日本人っぽい男性がいる。思わず栗に、厨房に日本人の方がいるのかどうかスタッフに聞いてもらったら、
「ウィ、ムッシュー。日本人のスタッフが一人おります。お皿の盛り付けをしているんですよ。」と教えてくれた。こんな遠いところで、しかも素敵なレストランで頑張ってる人がいる。すごいなぁ。

食後のチーズが運ばれてきた。カマンベールと青かび(名前は覚えられず)、そしてスイスのチーズ(こちらも名前は
覚えられず)。シナモン味のりんごのコンポ ―トが添えられていて、中央にはサラダが盛られていた。
私がカマンベールをあげると、あやぴーはうれしそうにそれを食べた。彼女の大好物なのだ。三種類のチーズはどれも
異なるタイプで各々の良さがあり、添えられたりんごのコンポートが口をさっぱりさせてくれた。

デザートのワインはお兄さんが注いでくれた。今回も宿題付き。但し「フランス北部」というヒントをくれた。
甘い貴腐ワイン。北部ということはソーテルヌじゃないよねぇ、、と栗と話し合った。
しかし、栗は「北とは言ってなかった。西だよ。」と主張し、話し合いは難航した。

まもなくデザートがやってきた。あやぴーには桃のアイス、私達にはパッションフルーツの果汁がかかった
バナナとパイナップルとフレンチトーストのカラメルロースト。ジンジャー(生姜)のアイスクリーム添え。
ジンジャーのアイスは私達の大好物なので、二人とも大喜び。
カラメルローストはパッションフルーツの甘酸っぱい香りが漂ってきて、食べる前から幸せな気分になった。
もちろん、味の方も期待を裏切らないおいしさで、量的にもちょうどよかった。

あやぴーの桃のアイスを一口もらった。ジンジャーのアイスもそうだったのだが、甘味があまりないことに驚く。
桃そのものの味なのだ。あやぴーは普段アイスがデザートに出ても、一つ(シンプル)分しか食べずに後は残す。
しかし、今日は三つ(トリプル)分を一人で全部食べた。かなり珍しいことである。


キッチンでは料理が終わり、洗い物が始まった。まもなくすると画像が消えた。
もう見せるものがなくなったのだろう。私は楽しかった食事が終わってしまったことに、何となく寂しさを憶えた。
(栗にそう言ったら笑われたのだが。。。)

コーヒーの注文を取りに来たお兄さんに宿題の答えを言おうと思ったが、答えは見つかっていない。
「ソーテルヌじゃないんですよねぇ?」と聞いてみると、「違うんですよー。」とお兄さんがうれしそうに笑った。
「これはナントで作られたワインなんです。」とのこと。ナントの貴腐ワインとは、初めて聞いた。
素敵な出会いがうれしい。

高級レストランでは、コーヒーを頼むとたくさんの小さなお菓子がついてくるのだが(大体おなか一杯で食べられない)、
ここはアーモンドのチョコレートがけとへーゼルナッツの砂糖がけだけ。お茶請けにピッタリで好感が持てた。

ゆっくり食休みをしてから、会計を済ませる。席を立った時にちょっと年配のウエイターさんに、日本人の方に
お会いできるか聞くと、「もちろん!」と笑顔で厨房に行ってくれた。出てきた日本人の男性は、画面で見ていたより
ずっと若くて、背が高かった。料理の御礼を言い、少し世間話をする。彼は今年の夏から来年の夏まで一年間のフランス
修行だそうで、このお店は残念ながら年末までなのだとか。「このお店ではたくさんのことを学ばせて頂きました。
素晴らしいシェフです。性格も良いし、料理に対する考え方も尊敬できる。毎週メニューが変わるので、
是非またいらしてください。」と言われた。

彼の話を聞いていて大きく頷けるものがあった。このお店はシェフの人柄がよく反映されているのだろう。
素材を大切にしたシンプルな調理。だけど、きちんと計算されていて、細部まで手が行き届いた美しい料理。
気負いを感じさせないのは料理だけでない。お店の雰囲気も、スタッフの応対も、全てが自然で、心がこもっていて、
だけど「さすが!」と思わせるプロの技量なのだ。一人一人がきちんと役割をこなすというチームワークの良さを
感じて、ますますうれしくなった。素晴らしいお店である。

私達が話をしている間、栗はシェフの奥様らしい思われるマダムと話していた。シェフは東京で仕事をしたことがあって、
それ以来、多くの日本人研修生を引き受けているらしい。「日本人はみんなまじめよ。仕事はきちんとしているし、
暇があるとフランス語を勉強しているの。素晴らしいわ。」と言っていたそうだ。

「またどうぞいらしてね。」という笑顔のマダムに御礼を言って店を後にした。村の中を少し散歩してから、
森に向かって歩き始めた。枯れ葉が風にゆれてはらはらと地面に落ちていく。口を開ければ「素敵なお店だったね。」
「すごくよかったね。」とそればかりの栗と私。おいしい料理を食べる機会は多いが、食事の後もずっと幸せな気分に
してくれるお店にはそれほど出会わない。このお店にこだわって、お誕生日ランチを今日まで待ったのは大正解だった。
そして、素敵なランチに招待してくれた栗に心から感謝。



美食をテーマにしたコートダジュール旅行には・・

●Michelin 2006 Red Guide France: Hotels & Restaurants (Michelin Red Guide: France) (ハードカバー)
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